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3月9日 JAAMメールマガジン 第33号

一般社団法人日本アセットマネジメント協会 JAAMメールマガジン 2020.0.3.9 発行

■今回の記事一覧

  1. コラム「アセットマネジメント 四方山話(1)」


【コラム】

コラム「アセットマネジメント 四方山話(1)~アセットマネジメントとPFI~」

今回から「アセットマネジメント 四方山話」と題し、アセットマネジメントに関する「ど真ん中」ではなく、少し遠めから眺めた話題をお届けしたいと思います。私の主観も交えることになりますが、どうぞお付き合いください。まず、第一回は「アセットマネジメントとPFI」です。
私は建設コンサルタントに勤務しておりますが、アセットマネジメントと聞くと、橋梁の長寿命化修繕計画や舗装の長期修繕計画など、机上での計画づくりが頭に浮かぶ方も多いと思います。一方、PFIについては公共事業の調達手法の一つであることは知っていても、会社の中でもその専門部所が担当しており、キャッシュフローだ、債務負担だ、弁護士に契約書を見てもらわないと、など、前述の計画を立案したり、修繕設計を行ったりする部所からするとPFIは縁遠いものだと思います。しかもPFIは新規整備の事業手法としての認識が強く広まってしまったため、アセットマネジメントからはより縁遠い存在になってしまったと言えるでしょう。実は、PFIはアセットマネジメント(維持管理)分野でも非常に有効です。PFIは長寿命化修繕計画などの長期計画を、絵に描いた餅にしないための実現手段なのです。

私がPFIを担当するようになったのはPFI法が公布された平成11(1999)年より少し前のことです。当時はPFI発祥の地の英国に学ぼうと、日本では現地視察もたくさん企画され、国も様々な調査を始めていたころでした。橋梁、道路、路面電車、刑務所、病院や学校といった新規整備案件が中心だったと記憶しています。そうした中で、河川(洪水防御)関係のPFI事業について平成12(2000)年と平成14(2002)年の二度にわたり調査をする機会を得ました。
英国では二つの有名な治水関係プロジェクトが行われています。一つはBroadland Flood Alleviation Project(BFAP) 、もう一つはPevensey Bay Sea Defenses Project (PBSDP)です。前者の事業は釧路湿原のような湿地帯にある延長240kmに及ぶ堤防の高さを確保するサービス(沈下管理)と、低水河岸の侵食防止のための護岸の維持更新を主とするものです。これらの堤防を建設するために使われていたのはその場にある在来地盤で、ほとんどはピート層であるため、時間の経過によって沈下し続けており、また河川の流路の変化もあり、越水や侵食による決壊の危険性を抱えていたのです。
後者の事業はイギリス海峡に面する東サセックスの延長9kmの海岸の汀線管理サービスです。海岸堤防の背後には、住宅地のほか、ラムサール条約で指定されているペベンシー平地が位置しており、高潮時にはこれらを含む約50平方キロメートルの地域が浸水するおそれを有していました。この海岸は、南西方向からの沿岸流が強いため、海岸の砂は西から東へと流されていく特徴があるため、木製の突堤群と礫堤防により侵食を防護する方法がとられてきましたが、海岸線の後退はすすみ背後地への浸水の危険が高まっていたのです。
事業内容に関するこれ以上の詳細は割愛しますが、これらの対策事業の事業手法としてPFIが採用されました。PFIを利用する最大の動機は、民間資金を利用して資本投資(堤防かさ上げや海岸堤防の堤体量の確保等)を行って一定の治水安全性(所定のサービス水準)を確保し、その状態を継続的に維持するサービスを一体として調達することで、はじめて線上の工作物としての機能を提供できるようになったことが挙げられます。従来の維持管理費の予算措置では、「あそこを直せば、こっちがダメ」となり、結局、いたちごっこが続くだけだったのです。
もうお気づきだと思いますが、これらの事業は新規整備ではなく、今あるインフラの機能を発現させることにあり、まさにアセットマネジメントの考え方(対象とする資産の価値の最大化)に基づく事業で、その実現手法にPFIを活用したものです。
我が国ではPFIは英国から約10年遅れで導入されましたが、土木インフラを主たる対象とした事業、ましてや土木インフラの維持管理(アセットマネジメント)については20年も経過した今日も導入事例はありません。アセットマネジメントへのPFI導入という観点では完全な周回遅れとなっています。土木インフラや防災事業に対するPFI活用については、「無理」と決めつけずに、リスクの見える化、納税者に対する説明責任を果たすうえでも有効な手段の一つとして改めて検討されることが適当と私は考えています。
BFAPは20年契約、PBSDPは25年契約で間もなく契約が満了する時期となります。平成24(2012)年にPBSDPの現場を再度訪問しましたが、日々の維持(海岸の東側から西側に砂利を運ぶ)業務が行われていました。機会を見てこれら事業のレビューもしてみたいと思います。
(次号につづく)

(日本アセットマネジメント協会理事 水野 高志)


発行元: 一般社団法人 日本アセットマネジメント協会(JAAM)
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